人類発祥の地、オルドバイ渓谷とヌーの大移動
タンザニア北部
「人類は何処から来たのだろう?」
この疑問の解答が、どうやら分かってきたらしい。
人類の起源は、アフリカであるといわれていたが、数々の人類化石の発見や、我々の細胞に含まれるミトコンドリアDNAの分子遺伝学的研究でも明らかにされたように、人類発祥の地が、東アフリカがあることがほぼ確定されたようだ。
東アフリカでも多くの場所で人類の化石が発掘されているが、交通の便が悪い場所が多く、観光で訪れることはかなり困難である。
人類のルーツのひとつといわれる、ジンジャントロプス・ボイセイは約180万年前の化石として発見された。この化石の発掘地・オルドバイ渓谷はそんな中でも比較的行きやすい所にあり、サファリツアーの一環として訪れることが可能だ。
タンザニアの首都のダルエスサラームから国内線で約50分、キリマンジェロ国際空港に降り立つ。空港よりサファリツアー基点のアリューシャへはリムジンバスで45分ほど。ここから北部タンザニアのサファリツアーがスタートする。
北部タンザニアはアフリカ一の高峰キリマンジャロを抱く『キリマンジャロ国立公園』、ヌーの大移動で有名な『セレンゲティ国立公園』、クレーターの別天地『ンゴロンゴロ保全地域』、木登りライオンで有名な『マニヤラ湖国立公園』、さらに『アルーシャ国立公園』などを擁する東アフリカ有数の野生動物の宝庫である。ここに、ジンジャントロプス・ボイセイの発見の地オルドバイ渓谷が含まれている。
この辺りにいくつも有る火山の一つ、ンゴロンゴロクレーターの山頂の縁を通るセレンゲティへの国道をサファリカーは進む。なだらかなンゴロンゴロ山麓をくだると見渡す限りの乾燥サバンナのセレンゲティ平原に出る。
そのまま道を進み枯れ谷に出るが、その手前を右折し東に十数分進むと平原が突然切れ、目の前に数百メートル幅、深さ百メートルは有る大きな渓谷が現れる。これがオルドバイ渓谷だ。渓谷といっても雨期以外は水まったく流れておらず、乾燥した枯れ谷である。
この渓谷の崖の下層部分で、1959年、ケニアに住むルイス・リーキ夫妻が発見した化石こそ、当時世界最古と言われた人類の化石、ジンジャントロプス・ボイセイである。
この化石が見つかった層は、約180万年前、当時の東アフリカは森林が覆い、オルドバイ渓谷は滔々と水が流れていたと思われる。
サファリツアーのハイライト
こうした森と水の接点に人類の祖先が住み着いていたのは想像に難くない。今は化石の保護のため渓谷の下に降りることはできないが、それでもかつてご先祖様がこの辺りに生活したかと思うと感動ひとしおであった。
渓谷の縁には博物館が建っておりここにジンジャントロプス・ボイセイ化石のレプリカと大人と子供3人の歩行跡化石のコピーや同じ地層から発見された石器などが展示されている。
オルドバイ渓谷観光を終えたら元の道に戻り北上する。ランドマークとなっている岩丘の直下にセレンゲティ国立公園のゲートがある。このあたりから次第に緑が濃くなり草食動物が散見される草原地帯に入って行き、やがてセレンゲティ中心地セロネラに到着。
セロネラも巨石の岩丘を中心にロッジや公園事務所が集まった所で、動物の種類も多く、いたるところでアフリカの代表的な哺乳類を見ることができる。
『セレンゲティ国立公園』はヌーの大移動で有名。最盛期の9月のシーズンには数十万頭のヌーやシマウマなどが隣のケニアの『マサイ・マラ国立公園』からやってくる。
両国立公園を流れるマラ川はせまいところでは高々20メートルほどしか無い川だが、雨期には滔々とした赤茶けた濁水が流れ、大移動の大きな障害となっている。私の訪れた9月末でもヌーは移動中で、河原はヌーやシマウマの死骸で埋められ付近は死臭がただよっていた。上空にはハゲワシが群舞し、死骸をついばんでいるものも多い。まさに生と死のドラマが繰り広げられている。
今は気候変動で乾燥が続き、干上った土地になってしまっているオルドバイでも、かつてはおそらくこのような光景が繰り広げられていたのだろう。
データ
行き方 タンザニア、アルーシャより自動車をハイヤーするかオルドバイを含めたツアーに参加する。
宿泊は国立公園の各ロッジで、ツアーには宿泊料金も含まれる.日本からのパッケージツアーもあるにはあるが.現地でオルドバイを含んだンゴロンゴロとセレンゲティツアーに参加する方が確実。
セレンゲティのヌーの大移動をみたいのなら7~10月がよいだろう.
川田 秀文
「地球の歩き方」では「台湾」や「台北」、「モンゴル」をはじめ、「ロシア」、「シルクロードと中央アジア」、「東アフリカ」などを担当。中国留学の経験を生かした中国関連の執筆や講演を行う。著作は講談社発行「よーするに医学」シリーズ、旺文社発行「三国志 英雄の舞台」など。有限会社CPC代表。山梨大学非常勤講師。

















